「読む」「読まない」の境界
数年前のコミックビームの編集者の講演や、この前it mediaに掲載された竹熊健太郎さんと赤松健さんの対談でも出た話ですが、「ネットで無料で作品を公開してもなかなか読んでもらえない。あらかじめ気にいってる作品にだけ目を通されて、残りはスルーされる事が多い」ようです。
実際、読者である自分からしても、ヤフーコミックやクラブサンデーなどで漫画作品がいろいろ無料で読めるようになってますが、新しい作品が追加されても全然目を通しませんね。
クラブサンデーではムシブギョーとアーティストアクロを読んでましたが、その二つが終わった今はクラブサンデー自体行かなくなってしまいました。
一方で、定期購読しているジャンプ、サンデー、マガジン、アフタヌーン他で新連載が始まると、とりあえず一話目を読んでから読み続けるか判断するようにしています。
新しい作品が追加された際の違い(「雑誌ではとりあえず読む」のに「ネット漫画はあまり読まない」)はどこから来ているのでしょうか?
個人的な見解では、「金を払ってるか、そうでないか」のような気がしています。
「有料の方が代金分の元を少しでも取ろうとして、とりあえず作品に目を通す」という感じです。
新しい作品が雑誌で始まり、一話目を読まずにスルーしてしまうと、その後の号でもその漫画はスルーし続ける可能性が高いです。
そうやってスルーしてしまう作品がどんどん増えていくと、「金を払ってるのに雑誌の一部しか読んでない」感が増していきます。
もちろん好き・嫌い、あう・あわないがあるので全ての作品を読み続ける事はありませんが、例えば全24作品掲載のうち18作品読んでる場合と、24作品のうち10作品くらいしか読んでない場合では、同じ代金を払い続けているのでも満足度(この場合は漫画の満足度ではなく、支払った代金に見合った物を得ているかという意味)が違ってきます。
だから新連載作品は、いきなりスルーするのではなく、とりあえず読んでみてから判断するようにしていると。
そうして読み続けているうちに作品を気に入って、コミックを買うようになるのが結構あったり。(新連載予告のカットでは、全然興味が無かった作品が)
一方、タダで読めるネットでの商業漫画は、金を払ってないだけあってスルーしてしまっても特に気になりません。
そういえば雑誌でも、90年代初頭は立ち読みでジャンプを読んでいましたが、あの時も金を払ってなかった事もあり、新連載が始まろうが読まずにスルーしちゃった事が多かったように思います。
雑誌の代金を払ってなかったから、全掲載作品のうちの半分以下しか読んでなくても気になりませんでした。
金を払って雑誌を買ってる人でも、新連載をどんどんスルーしちゃう人も中にはいるのかもしれませんが、多くの方は「支払った代金の元を少しでも取ろう」として、新連載や読みきりは一応目を通すようにしてるんじゃないでしょうか。
だからといってネットでの作品公開を有料にすれば新しく追加した作品が読まれるようになるかというと、今度は有料のせいで読める人が減ってしまうという問題がありますね。
スルーされる確率が減っても分母が減っては意味がない。
無料で公開する場合は、雑誌で作品を掲載する場合に比べてスルーされてしまう確率が上がるという事をふまえた上で、何らかのアプローチで作品をプッシュして少しでも目を通して作品を気に入ってもらうようにするしかないのでしょうね。
食いつきが悪い分、食いついたらできるだけ放さないようにしておくと。
その作品に少しでも興味を持ってくれた人を引き込むように、最初の数話は常にいつでも読めるようにしておいた方がいいように思います。
(一話目どころか、一話目の数ページくらいまでしか読めない「試し読み」がありますが、あれは一体ナニがしたいのやら?あんなの販促効果ゼロですよ。)