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03/05/2007

電子書籍の珍しい盗作問題

ちょっと1、2ヶ月ほど前の話になりますが、電子書籍で盗作問題が発覚したようです。

<でじたる書房  販売作品の中に盗作作品があった事のおわびと今後の対策について>

・盗作の検証ページ


「盗作」と言っても、今までのように「部分的にパクってる」ではなく、今回のケースでは「他人の作品を丸まるパクって、自分の作品として販売してしまった」という事件です。

この「でじたる書房」というサイトでは、誰でも電子書籍を販売する事ができるようになっています。
掲載料は無料で、実際に本が売れた時だけ販売手数料として本の価格のうちの何割かを取られるという仕組み(まぁ同人ダウンロードサイトなどでもよくある仕組み)になっているので、すごい勢いで自分の作品を販売する人が増えていってるようです。
(小説を売る人、絵本を売る人、漫画を売る人などなど)

昔「新しい漫画家のかたち」というエントリを書いた事があったのですが、漫画家の方が自作の漫画を電子書籍として販売するなら、ゲームや音楽・CG集などと一緒にごちゃまぜで販売される同人ダウンロードサイトなどよりも、電子書籍専門のこのようなサイトの方が漫画を販売するのにうってつけだという事で、その存在を知った時から注目していたサイトです。
(同じように「誰でも気軽に作品を販売できる」タイプの電子書籍専門のサイトがもっと多くできればいいのですが…。)

当時あのエントリを書いていた時に、「もしかしたら、いずれは起こるかもしれないなぁ・・・」と危惧していたのが、今回のような『他人の作品を丸ごとそのままパクって、自分の作品として販売してしまう』という事。

通常の本の出版などと違い、 「誰でも気軽に登録してすぐに販売を開始できてしまえる(一応作品が登録される度に、毎回サイト管理者の方で軽いチェックはありますが)」という仕組みのため、悪意のあるユーザーが他人の作品で一儲けしてドロンと消えてしまえそうなのが気になっていました。
そしてそれがついに現実のものとなってしまいました。
(今回のケースでは幸い犯人はドロンしませんでしたが。)

でじたる書房側では今後このような事が起きないように厳重なチェック体制をしくようです。

同じような事件は同人ダウンロードサイトでも起こりえるので、ああいったサイトでも販売サイト側で何らかの対策をしておかないといけないでしょうね。
(今回の事件では作者名が別物だったから販売サイトや消費者側からでもすぐに盗作だと判断できましたが、作者名(あるいはサークル名)を騙って登録してた場合は、販売サイトや消費者側では気づきにくいかもしれません…。
まったく関係ない人が、とある同人ダウンロードサイトで購入したデータを、そのサークル名を騙って別の同人ダウンロードサイトなどで登録して販売してしまうという事も…。
本物のサークル主が気づくまで販売を続け、バレたらドロンしてしまうとか…。)

販売サイト側だけでなく、作者側でも電子書籍サイト、同人ダウンロードサイトをこまめにチェックして、『自分の作品がまるまるパクられて販売されてないかどうか』、『登録した覚えのないサイトで、自分の名前(あるいはサークル名)で自分の作品が売られていないか』を確認しておくのが良いと思います。

このような事件が今後起こらないように、

●売れた作品の支払いについては、すぐに支払いを行わない。2ヶ月~半年は支払いをずらす。(すぐに支払うと、事件が発覚した時点ですでに逃亡されてる恐れも…。ただし、これはこれで正規の販売者にとっては不評かもしれません。)

という対策か、

●他人の作品をまるまるパクった作品を登録したのが発覚した場合は、すでに支払った印税の全額返還請求と、それにプラスしてサイトの名誉・信用を傷つけたという事で多額の賠償金を請求する仕組みにし、規約(目立つところ)に明記しておく。そして実際に事件が起きた際は実行する。
(ただし、今回のように丸パクリの作品のみ。 部分的に似てる作品の場合、盗作したのかたまたま似てしまったのかはわからないので、それまで対象にしてしまうと、実際は盗作してなくて似てしまっただけの作品まで被害にあってしまう。)

という対策などを導入するべきだと思います。

電子書籍サイトが市場として成長すれば、やがて法律の方でも現在の著作権法の改正などで何らかの対策がされるとは思いますが、それまではサイト側および作家側で対策を行っていくしかないでしょうね。

あと、とある作家を嫌いな人が、その人の作品について、「盗作だからすぐに削除してください。」という嘘の報告を販売サイトにして販売の邪魔をするなんていう事もあるかもしれません。
販売サイトはあせって作品をすぐに削除せずに、事実関係をきちんと確認してから盗作だったら削除するという事にした方がいいと思います。

*補足です。
通常は著作権侵害については「親告罪」となっていますが、今回のケースのように他人の著作物を自分の物として販売した場合については「非親告罪」となっており、著作者の告訴がなくても、バレた際はいきなり逮捕されるようです。

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