迷走する地上デジタル放送のコピーコントロール
「脱B-CAS」目指して地上デジタル放送の新しいコピーコントロール方式の話し合いが始まったようです。
B-CAS自体無くなってしまうのか、残すもののソフトウェア方式に移行するのかわかりませんが、年内に新方式の策定を完了したいとの事です。
新方式は策定後に発売されるハードに採用され、地上デジタル放送のコピーコントロールは新方式と旧方式が混在して運用され、そのためすでに地上デジタル放送関係の機器を導入した人は今までの機器を使い続ければいいのかと思っていたのですが、どうも雲行きが怪しくなってきました。
同時に「コピーコントロールを無視する機器にも対応する新しい著作権保護技術を導入しましょう。」という話もされているからです。
地上デジタル放送では、海賊版対策のためにコピーコントロールをかけています。
「デジタルだと画質を劣化させず複製が作れてしまうため、海賊版対策として複製に制限をつけましょう。」という事でこのようなコピー制御が導入されました。
その結果、多くのユーザーに不便をかける仕様(一度ディスクに番組を録画したら、ディスクから他の箇所へは移動すらできない。そのディスク自体の寿命は10~15年程度と短いのに)となっています。
ところが、このコピーコントロールを迂回する機器が作り出されてしまい、結局海賊版を作る業者は楽に複製が作れるようになってしまいました。
「一般のユーザーに不便をかける仕様を採用しておきながら、実際は全然海賊版対策になってないじゃないか!! 」という声がどんどん大きくなってきたため、また新しいコピーコントロールを採用して海賊版対策を行うために、今回の話し合いに新たな著作権保護技術の話が盛り込まれるようです。
でも考えてみてください。
たとえ新たな著作権保護技術が盛り込まれたコピーコントロールが策定されても、旧方式(現在の地上デジタル放送のコピーコントロール)を採用した機器を駆逐しないと海賊版対策になりませんよね。
新方式を採用した機器の販売が開始されても、旧方式の機器所持者はそのまま使い続ける事ができたら、結局海賊版業者は旧方式の機器を使って録画し違法な複製品を作り続けてしまいます。
これでは何のための新方式採用やら。
じゃあ「海賊版対策のために、旧方式の地上デジタル放送対応機器は○○○○年○○月○○日以降は使用できなくなります。お手数ですが機器を買い替えてください。」なんてやれるでしょうか?
すでに購入した人から猛反発されますよね。
旧機種でもファームウェアのアップデートで新方式に対応できればいいのですが、ダビング10でさえ結局一部の機種しかファームウェアアップデートで対応できなかったため、これも無理でしょう。
結局「新たな著作権保護技術を導入してコピーコントロールを迂回する機器に対策しましょう」というのは夢物語となりそうです。
仮に新たな著作権保護技術を導入し、かつ旧方式の機器の使用を禁じたとしても、また新たなコピーコントロール迂回機器が登場して結局海賊版は量産される事になるでしょうし。
「普通の視聴者には不便をかける事になり、それでいて海賊版対策にもなっていない」というなら、コピーコントロール方式はもっとユーザーの利便性を考慮した「EPN」方式に変更した上、補償金の額を大幅に増やしたり、(国内では)著作権違反の罰則を強化した方がいいのではないでしょうか。
(EPNなら現在出回っているほとんどの機種で対応できます)
現在はディスク1枚につき数円程度の補償金をかけているようですが、この補償金を数円ではなく100円~150円くらいにアップすると。
(補償金が中抜きされる事なくきちんと適正な権利者に分配されるかどうかの問題もありますが。)
「ディスク一枚につき補償金の負担額は数円と少ないが、一度ディスクに書き込んだら二度と別の場所へ番組を移動できない。ディスクの寿命は10~15年程度で、途中からブロックノイズが出まくったり、最悪再生すらできなくなってしまう。」
と
「ディスク一枚につき補償金の負担額は100円~150円となってディスクの価格が上がるが、一度ディスクに番組を書き込んだ後も、ディスクの寿命前に新しいディスクや次世代のメディアへ番組を移動やコピーできる。将来的には各家庭に大容量のHDDを搭載した『ホームサーバー』が普及するが、その際も昔ディスクに録画した番組の複製をホームサーバーにコピーし、大量のライブラリー内から見たい番組を瞬時に検索して視聴できるようになる。」
とでは、ユーザーはどちらを望むでしょうか?
未来(2015年くらい~)の視聴環境は私は以下のような感じになると思っています。
家に帰って『ホームサーバー』の電源を入れると数秒で起動。
ホームサーバーは何十~何百TBのHDDを搭載しており、何百もの番組を収納しておける。(HDD故障に備えRAIDで構成されており、さらにデフラグツールも搭載)
「過去の視聴履歴」を選択すれば、リストから視聴途中の番組をさっと選び出して瞬時に続きの再生が可能。
ライブラリー内の番組を「タイトル名」や「出演者」などで検索・ソートし、瞬時に見たい番組を探し出して再生する事ができる。「今日は冒険野郎マクガイバーを見るか」と思えば、「マクガイバー」という言葉で検索し、タイトルリストから選んで見たいエピソードを瞬時に再生可能。
(現在はいちいち見たい番組を収録したディスクを探し出してドライブに入れ、ドライブのマウントが完了してからようやく再生できるという手間がかかります。しかし将来は上記のように「瞬時に」探し出して再生できるようになると。)
「お気に入りポイント」を何箇所も設定しておけ、「お気に入りポイントの再生」機能でサムネイルと注釈を見ながら気に入ったシーンを選んで瞬時に再生可能。
同一番組内はもちろん、別々の番組で構成されたプレイリストを作成して連続再生可能。
(アニメや特撮のOP・ED集などが作れる)
HDDやフラッシュメモリーに大量の音楽を入れて音楽の再生ができるようになってから音楽の視聴環境が激変しましたよね。
いちいち聞きたいCDを探し出す事なく、「瞬時に」お気に入りの曲が再生できるようになりました。
映像でも同じように大容量のHDDを搭載したホームサーバーが誕生すれば、そこに何百もの大量の番組を収納しておいて好きな時に「瞬時に」いろいろな番組を再生できるようになるでしょう。
おまけに、携帯電話でホームサーバーにアクセスすれば、出先でホームサーバー内に格納してある大量の番組が携帯で見れるという事も可能になるでしょう。
現在PS3では、家庭内はもちろんネットを介してPSPで自宅のPS3にアクセスすれば、PS3のHDDに入れてある映像や音楽がネットを介して再生できるようになっています。
(おまけにPS3にDLNA対応のレコーダーを接続してレコーダーの電源を入れておけば、そちらに録画した番組もネットを介してPSPで見れます。ただし地上デジタル放送の番組はDTCP-IPにPS3が未対応のため現在は不可)
これを発展させた感じで、ホームサーバーに携帯電話でアクセスして出先でもライブラリ内の大量の番組を視聴できると。
携帯電話だけでなく同一LAN上に『対応したプレーヤー』を接続すれば、別の部屋のテレビでホームサーバー内の番組を再生という事も可能でしょう。
上記のような理想の視聴環境を阻害するのが現在の地上デジタル放送のコピーコントロールです。将来の事を何も考えてないですよね。
海賊版対策にもならず、視聴者に不便を強いるだけで、しかも将来訪れる「新たな視聴環境」の構築も阻害すると。
大容量ホームサーバーが登場してから、過去にディスクに録画した地上デジタル放送の番組をホームサーバーのHDD内にコピーしようとしても、コピーコントロールがかかっているのでディスクから別の場所へ移動すらできないのですよね。
何十ものディスクをセットできるディスクチェンジャーでも用意しますか?あほらしい。
もし補償金の額を1枚100~150円に大幅に増量するのと引き換えに、コピーコントロール方式を現在の方式からEPN方式に変更すれば、上記のホームサーバーへの取り込みも可能になりますし、メディアの寿命前に番組を別のメディアにコピーする事も可能になります。
BD-REが現在一枚400円弱となってきましたが、これが一枚500円くらいになるのと引き換えに、もっとユーザーに優しいコピー制御となるなら、多くのユーザーが補償金の増量に賛同するのではないでしょうか。
(ただ、50枚2000円以下で現在販売されているスピンドルのDVD-Rまで対象とすると、一気に値段が7000円以上になってしまいますね。DVDディスクは補償金大幅増の対象外とし、今後主流になるBDのみ補償金大幅増の対象とするとか。DVDではダビング時に現在のダビング10方式しか利用できないようにして。)
あと、セルBDについても、ホームサーバーへの取り込みができる機能をつければ面白いと思います。
ホームサーバーが登場すると、「いちいちディスクを探してセットして再生する」という行為が馬鹿らしくなるでしょう。
(ちょうど今「音楽CDをいちいち探してセットして再生する」のが馬鹿らしくなってきたように。)
BDはハードコートがされてディスクに傷がつきにくくなったとはいえ、ディスクをドライブに入れたり出したり繰り返しているうちに何千円もしたBDに傷がつかないかという心配もあります。
ホームサーバーならネットに接続して課金もしやすいはずで、もし「1枚につき300円くらい払えば手持ちの市販のBDをホームサーバーのHDD内に取り込める」となれば、ユーザーとしてはサーバーに取り込めて番組をより手軽に再生できるという利点が発生するし、取り込みの際のディスク情報を元に課金収入がBD発売元の会社へきちんと分配されるようになれば、販売会社に追加の収入が入る事になります。
(ただしHDD内に取り込んだ番組は別の箇所(ディスクやフラッシュメモリ)へは移動も複製もできないようにする。)
まぁこれはこれで「他人の家にディスクを持っていって、ディスク所有者でない人のホームサーバーへ番組を取り込みできてしまう。」という問題も発生するようになってしまいますが…。(BDディスク個別にシリアルナンバーを仕込めるなら、ある程度対策は取れると思いますが)
権利者団体は、「結局後で無効化されてしまう著作権保護技術」に変に期待するよりも、(言い方が悪いですが)数多くの正規ユーザーからもっと多くの金を絞り取る方向で話を進めた方がいいのではないでしょうか。
ディスク録画派にとっては、現在の不便なDRMが緩和されるなら、多少補償金を増やしてディスクの料金が上がっても気にはならないでしょう。
(ディスクの価格も補償金の分増加するも、大量生産でじょじょに1枚200~300円くらいに下がっていくでしょうし。)
補償金の配分方法についても、レコーダーからディスクにダビングする際に番組のタイトル情報をネットを介して送信し、その情報を参考におおまかな配分額を決めるとか。
あと、地上デジタル放送になって発生するようになった「天候が悪いと受信レベルが落ちて、アンテナレベルが閾値をわってしまうと番組がまったく映らない瞬間が発生する」という最悪な問題についてもきちんと対策してもらいたいですね。
せっかくディスクに残すために番組を録画したのに、アンテナレベル低下に見舞われて番組が映ってない瞬間があったりしたらはげしく萎えます。
「ディスクにダビングせず見終わったら消す派」の人も、お気に入りのドラマとかを視聴してたら、アンテナレベル低下によって大事なシーンなのに画面にまったく何も映ってなかった……という事になったら目が点になってしまうでしょう。(当然音声も無しです)
アンテナレベルを高くするためにより高性能のアンテナを導入したり、何万円もかけて屋内配線をやり直したり、ブースターを導入したりすると結構な金がかかるし、そういう事すらできない環境の人もいます。(集合住宅とか)
(ちなみに私の家はアンテナ買い替え、ブースターの導入を行っても、一部のチャンネルはやはり天候の悪い日はアンテナレベルが不安な感じになります。)
天候のせいで番組が録画失敗した場合も、もしネットに接続して1話200~300円くらいですぐにダウンロードしてBDディスクにダビングできるとなれば救済になるのですが…。
(mpeg4AVC方式で12Mbpsくらいのそこそこの画質で、放送が終わってすぐからレコーダーにダウンロード購入できるようにすると)
放送される全ての番組をサーバーで長期間公開するのは現実的ではないため、番組の掲載は「放送後~5日後まで」とし、それ以後はサーバーから削除すると。
ただし人気のある番組についてはある程度長期間掲載しておき、「レンタル視聴なら1番組200円、BDへの書き込みもしたいなら1番組300円」という風にすれば、ドラマの最初の方を見損なった人も、世間で話題になって興味がわいてから放送済みの分をダウンロードレンタルで観て、以後は地上波放送で続きを見る、という事もできるようになります。サーバー維持費の補助になるし、地上波放送の方も視聴率アップに繋がるでしょう。
(今まではレンタル開始されるまでずいぶん待たされましたが。)
コピーワンスの時は「ダビング失敗で番組がディスクにも記録されずHDDからも消える」という致命的な問題があり、これについてはダビング10導入で解消されたのですが、「天候悪化時にアンテナレベルが低下して画面が映らなくなる」というこれまた致命的な問題の方は放置されたままなんですよね。
アナログ放送時代は、アンテナレベルが落ちると多少ノイズが増える事はあっても、画面がまったく映らなくなるなんて事はなかったのに。
今回の話し合いでは、これについてもきちんと救済策を考えるべきでは?
せっかく新たな方式を導入してもすぐに無効化されるであろう著作権保護技術について無駄に話しあうよりも、地上デジタル放送の本当の普及を考えるなら、「コピーコントロールの緩和&補償金の大幅増」と「天候悪化時におけるアンテナレベル低下による録画失敗時の救済策」をきちんと話し合った方が、ユーザーにとっても放送業界や権利者にとっても益になると思います。
もう地上アナログ放送の停止まであと二年ちょっとになってしまったというのに、地上デジタル放送のいろいろな問題点が放置されたままになっているというのには呆れますね。
こんなぐだぐだな状態でアナログ放送停波までいっちゃうんでしょうか。






